上からは、全然だめ。

つい先日のこと。ちょっと体調を崩した。
症状はごく軽く、熱もなく、食欲もすごくあったが、何しろこのご時世である。「あの病気のこと」が気になる。

念の為自室に篭り、妹に頼んで「ご家庭で15分でわかる抗原検査キット」なるものを買ってきてもらった。

ドキドキである。
キットから濾紙のついた棒を抜き取り、唾液を含ませてキットに戻すと、15分で結果の赤い線が出るらしい。


意を決して棒を舐め回すが、なんだか苦い。
薬品とかその匂いにめっぽう弱い私は、すぐに棒をキットに戻してしまった。
濾紙を凝視するが、何も起こらないのである。
焦る。やっぱり唾液が足りなかったのだろうか。


…15分後。ごくごくうすーい線が一本、浮かび上がった。
一本は「陰性」の印である。
ではあるが薄い。いかんせん薄い。
その心もとないかすかな線を何度も見つめて、午後の時間が過ぎて行った。


翌日。
薄いけど陰性、と主張する私に、両親は念の為にもう一度検査しろとうるさい。あの苦いのをまた舐めるのは嫌だったが、高齢の両親を思いやってもう一度検査することにした。


キットから棒を抜き取った私は、ある事に気づくことになる。
棒の先端を保護するようについている、透明の「サック」に。
昨日は気がつかなかったなあ、とサックを外して舐めると苦くない。
そしてキットに戻した濾紙はみるみる試薬を吸い上げて、あっというまにくっきりとした赤い線が一本、現れた。
とにかく陰性だったからよかったです。


後々思うに、前日の薄い線は、サックの外側からわずかに侵入したわが液体、あるいは空気中の水分に反応して出たのだろう。
そして苦い味は、サックの外側を舐めてしまったため、試薬の味がしたのだろう。(改めて気持ち悪い)


でも説明書には、そのことは書いてなかったのです!
目の悪いお年寄りなんかは、私とおんなじ事しちゃってる人も、キット、いやきっといると思うんです!!


未経験のあなたに贈る今月の健康標語。


「サックの上からいくら舐めても、全然だめ。」


壁に貼っといてください。


くらちかべしんぶん

ボイスアーティスト倉地恵子から皆様へ。