自分で闘うということ。



魚屋を覗いたら、すごく立派な「真鯛のあら」をすごく安く売っていた。
買わないという選択肢はないやろ〜と嬉しく持ち帰ったが、 恥ずかしながら今まで鯛のうろこをひいた事はなかった。 
こんなに硬いとは! 
我が家のやわな包丁ではとても歯が立たず、あれこれ格闘の結果「ちょっとずつ手でむしる」という方法でなんとか対処。 

 
いや〜。 経験してみないとわからない事って、確かにありますね。 
お魚の表面には「うろこの模様」が当然ついているものと漠然と思っていましたが、実際にうろこをつけた状態の魚にはあの模様はないんですね。うろこを取ると鮮やかに現れる。 
あれは「傷痕」だったのね。
まあ私も少々は指に傷ができたしマニキュアも剥がれたので、この闘いはアイコといったところでしょうか。  


格闘を経て味わった真鯛の味は、やはり別格です。 
出来も見た目も素人料理だけど。
今まで知っていたつもりの身の柔らかさも、脂も、なんだか「自分のもの」になった気がする。


 私は普段、音楽を通して自分と闘っています。 
その戦績はさほどのものではないかも知れない。
でも身一つで闘って知り得たものは、きっとそれをしていない人にはわからない、自分だけの味わいになっているのでしょうね。
なんだか勇気が出た、歳の瀬でした。 


くらちかべしんぶん

ボイスアーティスト倉地恵子から皆様へ。